3.想い

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今や純白の大鎌は、彼女の右腕にまとわりつく、奇妙な武装になっている。 「……なぁに、それ?」 女の質問に、桜田は顔を上げて返答した。 「<クレセント・ヴァンパイア>の、スキル発動による別形態……名前は<イノセント・ヴァンパイア>」 「……"無邪気な吸血鬼"、か……」 女の呟きから、数秒の沈黙を挟んで、 「それって、いわゆる『武器との統合』ってヤツよね? 解除に失敗した時のこと、考えてる?」 「……」 再び静寂が満ちた後、今度は桜田が口を開く。 「……こんな状況になってみて、何か覚悟決まっちゃった」 彼女は同時に、左手を脇腹の裂傷に当てた。 「あんたからも、"彼"からも……もう逃げない」 自らの意志を表明する、たった数秒の間に、 「……!?」 傷口から流れていた血が、みるみる内に硬化していき、水晶のような塊となって、出血を止める。 「あんたに勝って、きちんと謝る」 手のひらを染める血液も、脇腹のそれと同様に固めて、 「そのためなら……ちょっとくらい危険でも、何てことないわよ!」 桜田は一気に駆け出した。 女は不機嫌そうに鼻で笑い、 「"別形態"とやらを使ったからって、私に近づけると思って?」 伸長させた関節剣で、横から薙ぎ払いにかかった。
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