白い世界『Α』

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目を開けると白が広がっていた 白い天井 白い壁 白い床 白いカーテン 白いベッド そう…ここは病院だ しかし、こんな生活はウンザリだ さっさと死なせてくれればいいのに… たぶん他人から見たら俺は植物人間と変わらないのだろう 既に生きる気は失っている だから俺はゆっくりと死を迎えるまで待っている あの世ならアイツらに逢えるのかな… 俺の名前は夢前 現人(ゆめさき うつせみ) 一応、大学生だ しかし今となっては下半身不随でベッドに寝たきりなワケだが 俺はあの日、絶望を知った そしてアイツらを失い、脚も失った アイツらとは中学からの仲間だった 嬉しい時は共に笑い 悲しい時は共に泣き 怒った時は共に怒り あらゆる感情を共にした アイツらを失うのが怖かった そして―― 本当に失ってしまった アイツらがいないと俺は… 生きていけないんだ… ぐすっ あの日から何度目かわからなくなった涙を流した――
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