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「とにかく、そういうわけだ。
悪かったな。こんなヘビーな話して。んじゃ、授業に遅れるなよ」
クラスの雰囲気を和ませるように笑顔を振りまきながら、須山先生は教室のドアに手をかける。
す、須山先生……。
あなたって人は―――
「あ、電話だ」
すると突然、クラス内の沈黙を断ち切るように、電話の着信音らしきものが鳴り響いた。
発生源は、須山先生。彼女は懐から自分の携帯を取り出し、そのまま通話を開始した。
「もしも~し。
……あ、なんだ母さんか。元気? 私?そりゃあ元気だよ。
で、今日は何の用? え?何? お見合い?……またぁ? いい加減にしてってば。
私はそんななんじゃなくて、ちゃんと自分で見つけたいって何度も言ってるだろ。
……は?そんなんだからいつまで経っても彼氏の一人もできない……って?
余計なお世話だ!
てか、母さんいつになったら少しは大人しくなるんだよ。50歳越えて病気一つかからないって、どんな体?
……あー、ともかく私はお見合いなんてしないからな。父さんにもそう伝えておいて。
うん、それじゃ」
ピっと通話を切って、何事も無かったかのように、須山先生は教室から去っていった。
……あれ、何だろう、この感情。心の底から沸々と湧き上がる、この感情。
あぁ、そうか。なるほど。
これが殺意か。
―――――。
「それにしても、どうやらあの話を本当のことらしいっすよ」
時間は流れに流れて、昼休み。
俺達はお馴染みのメンバーで集まり、教室の一角で昼食をとっていた。
……ちなみに、今日は茜さんは居ない。いつもは、我が物顔でこの教室で飯を食ってるけど、今日は何か、外せない仕事が一日中あるらしい。仕事をサボるような人ではないからな、茜さんは。
んで、俺が昼食である弁当(勿論、夕梨が作ってくれたやつ)を食べていると、吉岡さんがそんなことを言ってきたわけで。
「んと……何の話ですか?」
「何言ってるんすか。今朝の、須山先生が学校を辞める云々の話っすよ」
「あー、あれ……」
思わず俺は箸を止める。
「ってことは、まさか……」
「はいっす。さっき職員室に行って聞いてみたんすけど……昨日、本当に須山先生は辞表を提出したらしいんすよ」
なん……だと……。
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