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「いや、あまりにいつもの須山イズム発動させていたから、てっきり冗談かと……」
「あっしもそう思ってたんすけどねぇ……」
吉岡さんが困惑のため息を漏らすと、俺の隣に座っていた夕梨が代わりに口を開く。
「で、でも、もし本当だとしても……あまりに急過ぎない?」
「え?」
「だって、須山先生は私達に何の説明も無しにそんなこと決める人じゃないと思うから……」
「そりゃあ、まぁ、たしかに……」
妙に納得してしまった。
たしかに須山先生は自堕落で自由奔放で傍若無人でどうしようもなくてetc...の、教師として有るまじき人だが、それでも、生徒達に好かれ、そして生徒達を好いているのは事実。
そんな須山先生が、こんなに突然、しかも俺達に何も言わないで教師を辞めるなど、不自然すぎる。
「……どうにも臭うわね……」
すると、今まで黙っていた静香が、瞳を閉じながら呟いた。
「静香?」
「ただの勘だけど……な~んか今回の件、裏がありそうな感じがするのよね~」
「裏……って何さ?」
「そこまでは分かんないわよ。
でも、とにかくウチとしては、このまま須山さんが担任じゃなくなるのは面白くないわ」
静香のその言葉に、今までパンを齧っていた紫婉が、賛成するかのように懸命に首をコクコクと縦に振る。
周りを見ると、皆同じように頷いていた。
……んまぁ、俺もなんだかんだで須山先生が担任じゃなくなるなんて……想像できないんだよな……。
凄い屈辱だが。
「―――駆、居るか?」
――――と。
突如、教室のドアがガラリと開き、佐野が少しだけ慌てた様子で俺の名前を呼んできた。
なんだ、珍しい。
「どうした、佐野?」
「いや、実はさっき、廊下でダサ男に会ってな。
で、アイツが言うには、須山先生は一昨日、1年A組の生徒を一人ぶん殴ったらしい」
「須山先生が!?」
俺は慌てて立ち上がる。
須山先生が暴力?
んな馬鹿な。
言葉による暴力とイジメと辱めならともかく、あの人が生徒に手を出すなんて信じられない。
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