10 皐Side

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    「……兄貴、よく来るの?」 「あぁ。結構頻繁に来るね。俺から呼び出すこともあれば、いきなり押しかけてくることもあるし」 眉間にしわを寄せ、あからさまに不機嫌そうな顔をする。 「明日、帰ったら勉強道具持ってもう1回皐ん家来る。道も覚えたから」 「え、なんで?」 「…………来る」 「いや、それはわかったから。理由を言え。理由を」 なんだよ、棗。 いきなり不機嫌になって。 俺、なにかしたか? 「…………だって……」 「だって?」 そのときは、黙るなよ? ちゃんと言えよ? と思っていたんだ。 だが、棗がその言葉を発した後、言わせなければよかった……! と激しく後悔することになった。 「兄貴が皐にとって大切な人なのは知ってるよ。兄貴だって皐のこと大切みたいだしさ。でも、皐と付き合ってるのは俺なんだ。こんなこと言うの、わがままだってわかってるよ? それこそ、まだ会って1週間だし、付き合って1時間経ってないし。でも……なんか嫌なんだもん……。兄貴が、皐の特別みたいで、悔しいんだもん……」 ちりちりと焼かれていく俺の理性は残り少ない。 耐えろ! 耐えろ! 頑張ってくれ! 俺! 「ごめん……。なんか言ってることおかしいね」 「いや、別にそんなことないけど……」 「そう? ならいいや。片付けてくるね、マグカップ」 棗が立ち上がり、1歩踏み出す。 すると、さっき俺が出したガウンを踏み、つるりと滑る。 「うわっ!?」 棗が俺に倒れ込んでくる。 俺は反射的に受け止めようとするものの、棗が膝を曲げたおかげで倒れてくる軌道が変わり、棗の体は俺の手をするりと抜けた。 カシャンッと音がし、飛び散る破片が視界に入る。 破片に気を取られていると、背中と後頭部に鈍い痛み走り、体全体に重みがかかる。 思わず瞑ってしまった目を開けると、俺の視界の半分が茶色い何かで遮られていた。  
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