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入浴を終え一日の汚れを落としてさっぱりした未緒は、脱衣所で用意しておいた部屋着に着替え、鏡のついた洗面台の前で髪を乾かしていた。
適当なところまで乾いたところで髪を乾かす手を止め、そのまま部屋に戻ろうするとふと、まだ赤いままの左目が鏡に映り、そこで足を止めた。
「おっと、危ない、危ない…」
つい部屋にいる調子で脱衣所を出ようとしていた体を反転させ、着替えを入れておいた籠の中を漁る。
「…ん?」
だか、いざ付けようと探してみるとコンタクトのケースが見当たらなかった。
洗面台の上を見ても、籠の中をひっくり返してみても、それはどこにも見当たらない。
「まさか…」
未緒は思わず顔から血の気が引く感覚を覚えた。
「持ってくるの、忘れた…?」
どのくらいその場にいただろうか。
いくら探しても出てこないコンタクトを諦め、じっと脱衣所から出ることが出来なかった未緒はとうとう腹を括り、廊下に出ることを決断した。
怪しいとは思いつつ、そっと廊下へと繋がる扉を開け、辺りに誰もいないかを確認する。
「…よし」
左右に誰もいないことが確認出来ると、未緒は左手で左目を隠しながら急ぎ足で自室へと駆け出した。
「あと、少し…。頼むから、誰も来ないでくれ…」
未緒は自分が通って来た道を振り返りながら、何度もそのことばかり願った。
だが、そんな未緒の願いも虚しく終わりを告げる。
再び前に振り返った瞬間、死角となる左側から何かが勢いよくぶつかってきた。
未緒はあまりにも突然のことでその衝撃を防ぐことが出来ず、そのまま壁に体をぶつけた。
「いッ…たたッ…」
バランスを崩された体を壁で支えながら体勢を整えると、未緒はぶつかってきた何かに目を向けた。
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