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とりあえず、レイはテーブルを挟んだ対面のソファーに彼女を座らせた。
「随分と悩ましい表情じゃない。伯母さんぞくぞくしちゃうわ」
「申し訳ありませんが、どうつっこんでいいのか分かりません」
なまめかしく身体をくねらせるアイリスに、レイは嘆息した。
いつもいつも、この人は真面目に話をする気が無い。
「もう。冗談も通じないのね。で、何用かしら?」
「彼が向こうに回ったこと。貴女は、気がついていたのですか?」
無駄話はいい。
この人には、最初から本題をぶつけるべきだろう。
「気がついたのは最近よ。もっとも、可能性は考えていたけれど」
「ルーナの一件ですか?」
「それは飽くまで、私の危惧を確信に変えただけ。その以前。貴方が彼と戦ったあの日に、もしかしたらとは思っていたわ」
随分と早い。
半年以上も前から、ということになる。
「……何か、事前に手を打てなかったのですか」
つい口調が厳しくなったことを、レイは自覚した。
今更どうする事も出来ないなんて、分かっているのに。
「そうね。そう言われると、返す言葉が無いわ。結局、貴重な強化の使い手を一人、みすみす渡してしまったのだから。それに、貴方達にも辛い思いをさせる事になるわね」
肩を落とし、目を伏せるアイリス。
普段見慣れない光景だからか、レイは少し言葉に詰まった。
「……まあ、済んだ事です。今大事なのは、彼への対策の方でしょうから」
本当の本題。
あの強敵を、如何にして打ち倒すか。
アイリスならば、そのヒントを持っているかもしれない。
レイの戦い方を知っている彼女ならば、なにかこちらのアドバンテージを知っているのではないか――。
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