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「はい。失礼致します、火影様」 燕は軽く頭を下げると、気配を残さずに消えた。部屋に残された老翁は巻物を机の上に置くと、静かに椅子から立ち上がり夜の音のない里を窓から見つめた。 火影、それはこの里の長のことである。年を取った火影は、里を見下ろしながら眉間に皺を増やした。 燕は火影室を出て夜気に身を包んでいた。自分の一族が所有する森まで来ると、焔と同じく変化を解く。その姿は、先ほどよりも6歳ほど幼い焔と同じ年頃の少年だった。 黒髪を一つで束ねていることは変わらず、青年をそのまま小さくした姿だった。暗い森の中を歩きながら、彼は口癖である 「めんどくせぇ」と知らず呟き、欠伸を一つ。 歩くたびに両耳につけているピアスが月の光を跳ね返して、きらりと光った。 続
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