白い葬列

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 一番目の王子は、長男に相応しく責任感の強い面倒見の良い若者だった。  母親の違う弟達の勉強を見てやり、城の召使い達にも慕われ、皆の尊敬を一身に集める太陽のような青年だった。  彼は22歳になったある日、城の物見の塔から転落して命を落とした。寄り掛かった覗き窓が崩れ落ちたのだ。  二番目の王子は、とても賢く聡明な若者だった。  能く兄を助け、将来は兄王を補佐する片腕となる事を誰もが信じて疑わなかった。  彼は21歳になったある日、突然原因不明の病の床に臥し、そのまま帰らぬ人となった。医師達は必死になって原因究明に当たったが、結局病名は判らずじまいだった。  三番目の王子は、快活で悪戯好きな、誰からも好かれる少年のような若者だった。  市井を好み、人々の中へ自ら進んで入って行き、皆と一緒になって馬鹿騒ぎをするような明るい青年だった。  彼は20歳になったある日、雨後で増水した河に転落して命を落とした。酒に酔って前後不覚の王子と、見知らぬ男が一緒に歩いている姿を目撃されていたが、酒に強かった王子がそれ程になるまで酔うとも思われず、また一緒に居たと言う男の身元も不明だった。  四番目の王子は、芸術を愛する物静かで心優しい若者だった。  竪琴に天分の才を示し、若くして国でも屈指の芸術家となった。  彼は19歳になったある日、演奏会の帰りに馬車を盗賊に襲われ命を落とした。国を挙げて犯人を追ったが、結局捕まらずじまいだった。  五番目の王子は、剣と狩りを好む、勇敢で物怖じしない若者だった。  近隣諸国にまでその名が鳴り響く程、その剣の腕は際立っていた。  彼は18歳になったある日、隣国との酒宴の席で、酒に毒を盛られて殺された。すぐさま隣国に報復がなされたが、彼等が犯人ではない事を国民の誰もが信じて疑わなかった。  そして六番目の王子だけが残された。
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