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「…………?」
不意に隣から小さな笑い声が聞こえ、そちらに視線を向ける。その発生源はサテナ。下を向いているせいで長い髪に隠れた彼女の顔を覗き込む。すると……。
「……っ」
……俺が恐れられたのが凄い嬉しかったんだな、サテナ?
「……素、晴らしい……! 流石は、それでこそ、相変わらず、だ剣聖殿っ!!」
そんな喜びに顔が緩んでいるサテナと反対に座る男は、多分、絶対、先ず間違いなく、ただ感動にうち震えていただけなのだろう。
全く期待を裏切らない変態だな、この貴族は……。
「どうでしょう! もし御嫌でなければ、その力、私にも御見せ頂けないでしょうかっ?」
「え?」
◆◆◆
「え?」
これこそ正にあれよあれよというべきか。常人では理解の出来ない程に高まったウォッシのテンションに促されるままに、着替えさせられ、この修練場に連れて来られた俺。
「いやぁ、いい日よりだ。正に戦闘日和と言ったところだね!」
そこはせめて特訓日和にしとけよ、と本人に伝えた所で意味のなさそうな助言が頭を過ぎる。
サテナが多少ペアルックが終わり消沈していたが、それ以外の面子はやけに嬉々としてこちらを眺めている。
「うわぁ、再びルシファ殿の剣が見れるのですね……」
中でも一番嬉しそうなカタリアがそう口にする。その手に握られているのは、こいつの身体からしてみれば少し大き過ぎるように見える一降りの刀。
「お前、いつもそれを使ってるのか?」
体格に合わない武器は、例えどれだけ修練しようとも熟達には至れない。一応ウォッシが教えているという事なのだから心配はないと思いながらも、俺はその不釣り合いなカタリアの獲物について尋ねてみる。
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