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「いやぁ、前の身体が本物じゃなかったという話だったけど……、こいつは半端じゃないな……」
少し引き攣った表情でこちらを眺め、そんな評価を口にするサファルト。
いやまあ、俺としては前の方が馴染みは深いし、どちらかと言えば向こうの方が本当の自分な気はするだけどな。
「ほう。そんなに違うのかい?」
相変わらず、そういった戦闘能力についての話題に対する食いつきに定評のあるウォッシが先程までと打って変わり、身体を乗り出させてそう尋ねる。
勿論その隣では奴の嫁さんも目が爛々だ。
「ああ。昔は何と言うか捕え所のない様な恐怖を感じさせる方だったんだが……」
そりゃ、俺じゃない空想(やつ)を見ながらじゃあ俺は捉えられねぇだろ。
「今は違う。明確な恐怖、その純粋な力の差が俺の本能的な部分を脅かしてる、そんな感覚だな」
顔は笑っているものの、冗談を言っている様には聞こえないサファルトの言葉に皆が黙り込む。
まあ、確かにこいつは前から野生動物並の馬鹿げた感覚の持ち主だったからな。普通の奴では計りきれないだろうこの身体の性能に気付いてもおかしくはない。
「サファルトが言うのならば本当なのでしょうね……」
奴と長い間一緒にいて、その感覚に対して俺と同じ様に認めているカタリアが、黙り込んだ皆の中で始めに声を上げる。
「……そんなの今更じゃないのですか?」
ん?
「はぁ……、やっぱり邪神様は凄いのですねぇ……」
俺の想像では、こいつ等はサファルトの言葉に驚愕して黙り込んでいたはず。
しかし、カタリアの次に口を開いたウルセラは呆れた顔でそう口にして、嬢ちゃんはうっとりとした表情でど失礼な言葉を零す。
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