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「なに……今の…」
私は、途中まで巻かれていた足首の包帯を見やり、それから自分の瞼に触れた。
「…………」
今さっきのって…。
自分の頭の中で再現すると、間違いなくあれは……口づけだった…―。
そう思うと、顔中に熱が集まるのを感じる。
心臓がドクンドクン…と素早く脈を打つ。
さっきのって…一体…何のつもりだったんだろう……。
「ポプリー!
タオルとお水持ってきたわよ!」
部屋の扉をバンッと開けて入ってきたのは、さっき出て行ったアンジェリーナだ。
「…あ、ありがとう」
なんだか、アンジェリーナにはちょっと申し訳ない気がしてならない。
アンジェリーナから目を離しながら、私はお礼の言葉を呟いた。
アンジェリーナは私のそんな様子を何も気にせず、ベッドの隣りにある木で出来た丸椅子に腰を下ろした。
「はい、これお水よ」
「…ありがとう」
コップに入った水を受け取り、ちょうど喉が渇いてたから、潤そうとした。
「さっきね、ここに来る途中フィルとすれ違ったんだけど、様子が変だったのー」
「―…ぶふぅっ!!
げほ……っ、ごほ……!!」
み、水が違う気管に…!!
「大丈夫!?何やってるのよー」
アンジェリーナは持っていたタオルをパタパタと私の水が華麗に滴っている顔に押し付けてくれた。
「……ご、ごめん。
そ、それで…?」
話しの途中が気になり、真っ赤になっているであろう顔をタオルで隠しながらアンジェリーナに問いかけた。
「え?ああ、顔がとっても赤くなってて、話しかけても全然気が付かないで、そのまま廊下走っていっちゃったのよ」
「……そっか」
顔、フィルも赤いんだ。
フィルも……私と同じような気持ちなのかな…。
タオルで隠れた口元は、無意識に少しだけ口角が上がっていることに、私は気が付かなかった。
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