Bark Fenrir

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 俺はヘリが見えなくなった後も、その場で佇んでいた。いつしか雨脚は去り、雲間からは月が覗いている。嵐のような一日は過ぎた。  俺は誰もいなくなったガレージに戻った。明日には……いや、既に今日か……カラードから派遣される整備士と、専属のオペレータが来る事になっている。仲間は皆、新たな道を歩み出した。俺にも新たな道が用意されている。  足踏み等している暇は無かった。彼等には彼等の道を進む事しか出来ないように、俺には俺の道を進む事しか出来ない。自分の脚の代用は効かないのだ。  俺は、ガレージの一角に鎮座している自分のネクスト『フェンリル』を見上げ、そして叫んだ。いや、それは犬吠に近かった。  静まり返ったガレージに、その叫びは不気味に響き渡る。 「フェンリル、お前もすぐに吠えさせてやる。負け犬の遠吠えではない、勝利の雄叫びってやつを」  フェンリルな何も言わずただ佇んでいた。この日から俺の新たな物語が始まった。      →To be continued→
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