Prologue

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 あの夜を境に世界は変貌した。  企業は再び新たなフロンティア、宇宙に利益を求め奔走し始める。  そんな中、アサルト・セル消失の恩恵を真っ先に受けた企業がある。  斜陽企業『テクノクラート』だ。  旧式の兵器ばかり生産している、立ち直れない企業。  しかし、テクノクラートとて好きで『斜陽』に甘んじているわけではない。これには理由があった。  国家解体戦争以前。まだ戦場を烏達が支配していた時代。企業は新たなフロンティア、宇宙を巡って激しく争っていた。  それはある意味、テクノクラートの時代でもあった。宇宙用ロケットエンジンの開発に余念がなく、当時、宇宙開発の行く末は、同社の手中あったと言っても過言ではない。  だが、他の企業がそれを黙って見ているわけがなかった。宇宙開発の争いは激化の一途を辿る。  そんな中、ついにただ敵対者を妨害するためだけの、致命的な無人兵器、アサルト・セルが企業によって開発されてしまう。  それは、争いの激化に伴い衛星軌道を埋め尽くし、結果、人類は自ら宇宙への道を閉ざすことになった。  そしてそれは、テクノクラートの時代の終焉でもあった。  宇宙開発に全てを賭けて来たテクノクラートに於いて、それはまさに致命的であった。今まで培って来た技術が無に帰したのだ。  そこからは周知の通り、テクノクラートは斜陽に入る。イクバール(現アルゼブラ)という、巨大企業のグループ傘下に下る事で辛うじて存続してきた。これが今日まで続く、テクノクラート斜陽までの実態である。
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