第三章 贄

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 金銭箱をよけて通り、社の扉を開けたようとした瞬間、バァンと扉が勝手に勢いよく開いた。  驚く間もなく、首を何者かの腕で締め付けられ、頭に固い何かを突きつけられる。  海人は何が起きたのか分からず、ただ事ではないという恐怖と焦りで冷や汗をかく。  目の前にいる入江と比丘尼は驚いた顔をして身を構え、水城は「あっ!」と声を上げていた。  「あれ?」海人を腕で固める何者かは、間の抜けた声で言い、腕を放す。  海人は締め付けられ痛む首をさすりながら後ろを振り返った。  そこには銃を海人の額に向ける鮫島刑事がいる。  水城が、「刑事?」と声を上げた。  鮫島刑事は銃を向けたまま海人の顔を確認して「海人くん!水城くんも」と驚きの声を上げる。  「わあ、銃向けんなって」と海人は向けられた銃を青ざめた顔で見て叫ぶ。  鮫島刑事はほっとした表情をして、拳銃を下ろす。  入江が、「この人は?」と海人と水城に訊ねる。  「図書館でも話した、外からきた刑事さんだよ」と海人が応える。  鮫島刑事は「鮫島牙です。よろしく」と頭を軽く下げ、海人に「良く無事だったね」と言う。 「鮫島さんこそ。もう死んじゃったかと思ったよ」  海人は鮫島刑事が刑事であるからか、なんだか気持ちが落ち着く。  比丘尼が社の中を覗き、「他にも人がいるようね」と言う。  鮫島刑事は「怪我人なんだ。みんなと灯台へ避難しようとしたんだけど、移動するのが無理そうだったからね。ここで休ませてもらうことにしたんだ」と説明する。
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