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新学期が始まった。あのクリスマス以来、会うのは、初めてだ。
どこか照れ臭いが、早く顔が見たい。山岡が来る時間まで、あと5分くらいだろう。
なかなか姿が見えないので、坂の方を見下ろすが、来るのは、違う生徒ばかり。
今は、その生徒達の挨拶すら、もどかしい。
今日、何度目かの“おはよう”を返した時、姿が見えた。
ゆっくり歩いてくるあいつ。下を向きながら歩いてくるあいつ。こっちを見ないあいつ。
こっち見ろ!顔をあげろ!なんて、がらにもないオレの祈りを全く知らず、ゆっくりゆっくり近付いてくるあいつ。
愛しくて仕方がないあいつ。
オレの前に立った時、はじめて顔をあげた。
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