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† † †
とある秋の午後。
残暑の続いていた毎日が嘘のように肌寒く感じ始めた強い風の吹く放課後の事だった。
灰色のプリーツスカートに白いブラウスという格好をした少女が人気(ひとけ)のなくなった校舎を歩いている。
彼女は、その身に女神でも御光臨させたかのような美貌を持ち、特殊な趣味をお持ちでない限りは見惚れてしまうような、『可憐』という言葉がしっくりとくる容姿をしている。
栗色の柔らかそうな髪は天然物で、その双眸に埋め込まれた宝石は琥珀色の輝きを惜しげもなく放っている。
ただ、難点を上げるとするなら、誰もが口を揃えてこう言う。
『容姿と性格のギャップが有りすぎる!!』
これこそ、彼女が何度となく言われてきた台詞だった。
更に彼女――早乙女聖(さおとめひじり)――は、その容姿のせいで「可憐じゃない……」という何とも不名誉極まりない言葉を投げ掛けられる原因にもなっている。
「ふざけんじゃないわよ、あのハゲオヤジ。ちょーーっと戦闘学で焼き加減を間違えて三人ばかり炭にしたからって三時間も説教なんて! 今度「あ、頭が眩しい!?」とか言って手を滑らせてヅラ燃やしてやるんだから!!」
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