第14章 鳴り響く祝福と崩壊

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グリスは髪をはらい、皇帝の前へと移動する。雰囲気や表情のない顔を除けばそれは灰色の姫。 「もう隠す必要もなくなった。」 「どういうことだね?」 グリスは行儀悪く王座の前の階段に座る。あえて皇帝の顔を見ないように、顔を見せないようにも見える。 「リンを取り戻す為には、俺が作り上げた虚像は邪魔でしかない。それが生み出したズレすら、今回は命取り……。まぁ、カーリナがリンの治癒陣を弄ったからグリスすら保てなくなってこのザマなんだが」 「グレイドという人物は初めから存在しなかった、と?」 アミキティアが言ったように、もうグレイドは一度しか保てない。グリスに戻った今、もう、グレイドにはなれない。――グレイドは、いなくなった。 「そうさ。そのうち都市伝説のようになるだけさ。それでいい」 声音は、非常に疲れたように勢いをなくして響いた。 皇帝は、困ったようにため息をはく。 「それで君は……帝の頭数に入らなかったがどうするんだね?」 「もちろん、カーリナと直接対決する」 「勝てるのかい?」 間髪入れずにそう問えば、グリスは呆れたように鼻をならす。
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