第14章 鳴り響く祝福と崩壊

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立ち上がってからは二人とも微動だにしない。 「俺には休みも必要ない。――――もう、何も要らない」 『わたくしは、みんなが幸せであれば、それだけでいいですわ。 もう……何も要らない』 重なる記憶。脳裏に浮かぶは、力強く空を映す紅蓮の瞳。 (この子達は……ホントに、どこまでそっくりなんだろうね……) 皇帝はグリスが本当にリンから切り放した負の心だったんだな、と実感する。無意識に『だった』んだなと、過去形で。 愛娘の魂を持つ者。だから、愛娘と言ってもいい存在。 グリスに歩み寄り、銀灰の頭に優しく手を置いた。 「それじゃあ……行ってらっしゃい」 グリスは驚いたように目を見開くと、意地悪い笑みを見せた。 「それを言う相手は俺ではない。どこかにいる王子にでも言ってやるんだな」 今度は、皇帝が目を見開く番だった。 「君は何を……」 「王子は生きている。それも、比較的近くで」 頭に置かれた手をとり、グリスは転移してしまった。まるで自分で探せと言うように。 「ちょっ……もう。どういうことなんだ……。ん?誰だ!」 グリスと入れ替わりに、謁見の間の入口で人の気配が。 『不穏』。 皇帝は思った。とてつもなく嫌な予感……。 キィ、と控え目に扉が開くと、不穏の正体らしき人が入ってきた。 「ただいま帰りました」 目に写るは、絢爛な紅蓮。
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