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「……申し訳ございません。
そのような申請は、承っていないようなのですが……」
「ふむ、そうか。
すまないがガードの仕事でな、政府に呼び出しを受けているんだが……そうか、困ったな」
トラック二台程度なら余裕で通れそうな幅をした、二十メートル程の長さの広いトンネル。
その手前にある強化ガラスで遮られた窓口越しに、私は一人、強面の警備員と話していた。
他の三人は、近くの物陰で待機させてある。
……ここで行われているのは、都市内外を出入りする物資のチェック。
そして……もう一つの主な目的は『監視』。
外部からの侵入を防ぐため……また、内部からの能力者の脱走を防ぐため。
常に十人程の警備員が、銃器を手に監視の目を光らせている。
おまけに、ここら一帯には能力を無効化する電波が張り巡らされているため、能力者はこの『ゲート』周辺では能力の使用を封じられる。
……能力が使えない能力者など、銃さえ持っていれば敵ではない、か。
なるほど……たしかに合理的だ、最低限必要な数の人員だけが配置されている。
「いくらガードの本部長、一条様とはいえ……許可無しではここをお通しできません。
もう一度、申請が正式に受理されたかどうか、ご確認なさってください」
トンネルの両側に一つずつある窓口に、それぞれ一人。
物資のチェックと警備のために、十人。
全部で計十二人の、警備員
目の前の警備員の男は、相変わらず事務的な対応を続けている。
……宝条との打ち合わせ通りなら、そろそろか。
「……そうか、それは残念だ。
ところで君、仕事は大変かね?」
「……いえ。
私はこのゲートの警備という仕事に誇りを持っていますので、然程大変とは感じませんが……」
私の質問を受け、困惑したような表情を見せながら答える、窓口の男。
……まあ、正常な反応だな。
『まだ』ガード本部長という上層の人間である私が、こんな当たり障りの無い会話を一警備員に対して行っているのだから。
不思議だと思わない方が、どうかしてる。
「……誠に申し訳ないのですが業務に支障が出ますので、これ以上、は……?」
窓口の男が最後まで言い切る前に、ゲートの明かりが消える。
急にゲートの電力が落ちたからだろう……警備員達や運送業者達がざわつき始めた。
……ついに、来たか。
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