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かのじょはゆめをみている。
黄色が軽やかに揺らめく。虹色の水泡が水面に向かう。
悲しい程に美しい青、すべてを包んでくれた赤。
柔らかな緑は静かに歌い、暖かな桃色は優雅に踊る。
全てが混在する海の中を、彼女は漂っていた。
下をみれば、穢れを知らない白の上に、灰色と黒の罪が蠢いている。
それはおぞましく、見ているだけで吐き気を催すような光景だった。
ずっと目を逸らしてきたそれ。
頑丈な檻に閉じ込めていた。
今やその檻は破壊され、罪は醜い姿を晒しながら、鋭い爪のついた手で、彼女を手招きしている。
長い間、閉じ込められていた恨みを晴らそうとでもするように。
(あぁ、やっぱりだめだったんだ)
彼女は目を細め、唇を噛む。
あの罪と向き合わないまま、彼に迎えにきてなんて、やはり虫が良かったのだ。
細い両脚で水を蹴り、彼女は泳ぎ出す。下へ、下へ。
罪は牙を剥き、柔らかな肌を切り裂くだろう。
しかし彼女には、すべてを見つめる責任がある。
罪が蠢くその奥に、微かに見えるのは扉だろうか。
あの白い扉を開けたなら、きっと。
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