彼女と僕の、透明ないのり

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ーーー誰がいなくとも、世界は当たり前に廻り続ける。 僕がいなくとも朝は来て、沙弓が起きずとも夜は来る。 時間は願いを弱め、強め、神様は気紛れにひとつの願いを叶え、その裏でふたつの祈りを砕く。 皆、幸せになりたかった。 誰かのことが大好きだったから。 強い人間になりたかった。 ………自分以外を傷つけてでも。 僕たちは皆臆病で弱く、残酷だった。 だけど、醜いだけではなかった。 もしも歯車が、壊れずに噛み合っていれば、幸せな未来がやってきたの? 引き金を引いたのは僕。 だけど、今の僕はあまりに無力で、彼女に触れることさえできない。 ねぇ、もしも、ひとつだけ、彼女に伝えられるなら、やっぱり『ごめんね』になってしまうよ。 僕の涙は雨になり、灰色の雲から降り注ぐ。 この雨を止められるのは、 ーーー。
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