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中央通りに来ると名残惜しみながらマリーの手を離した。
行き交う人々の波の中、向かい合う僕とマリー。
「明日は来てくれる?」
「ん~、包帯がとれたら行くつもり」
「そっか。無理はしないようにね」
「うん」
マリーの額の包帯、いつとれるのかな。
早く良くなってもらいたいし、早く来てもらいたい。
本当は明日からまたいつもどおりに毎日来てもらいたいけど、ワガママ言ったら困らせてしまうから我慢。
「気をつけて帰りなさいよ」
「うん。じゃあまた」
「あ!!ちょっと待って!!」
お互い手を振り別れようとしたとき、マリーが何かを思い出し声をあげた。
首を傾げてマリーを見れば僕の顔を指差す。
正確に言えば目を。
「あなたは紅のほうが似合うわよ」
「あ、気づいたんだ」
「うん。紅のほうが綺麗だわ。
じゃあまたね!!」
言いたいことだけ言って、マリーはお店の方へと走っていった。
取り残された僕は前髪を指で引っ張って、ついつい口元が緩んだ。
マリーのおかげで前ほど嫌いじゃないこの瞳。紅が似合うって言われて、嬉しかった。
嬉しい気持ちで通りを歩くと町の外に向かわず、角を曲がった。
余計なお世話ってマリーは怒るかもしれないけど、何かしてあげたいんだ。
辛いことを減らしてあげたいんだ。
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