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燃え盛る炎に、纏わり付く熱風。
そんな風に混じる、かぎなれた鉄の臭い。
そして、耳にこびりつく怒声や悲鳴。
そう、それはまるで地獄のような光景だった。
『おい―――状況はどうなっている?』
『はっ!』
阿鼻叫喚の響く中心に、仁王立ちする人物が叫ぶ。
もとは白銀に輝いていた鎧も、浴び続ける返り血によって赤黒く変色していた。
そんな人物のはきはきした声に応えるように、同じく鎧に身を包んだ人物が駆け寄ってくる。
『報告しますっ!
伝令兵によると、敵の数は約10万。
先程前線を破られたため、こちらの兵力は約7万に減りました。』
『ちっ―――早くもやられたか……』
その報告を苦々しい表情で聞きながら、唇を噛む。
『それで、敵―――魔物の動きは?』
『前線を突破した勢いそのままに、こちらへ突っ込んできていますっ!』
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