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真っ赤な夕焼けの空
ブラシで白くなぞったみたいに雲が浮かんでいる夏の空は、もうじき辺りが暗くなる事を報せていた
「………。」
そんな中、無表情で回りを見渡す一人の少年
体には真っ赤な液体が吹き付けられたみたいにべっとりと付いている
いや、正確には彼の回りの景色全てが
本来ならまだ緑色に咲き誇っているはずの原っぱも赤い液体で今は真っ赤に染められている
本来なら落ち着いた印象を与える白い家の壁も今は真っ赤に染められている
花も、木も、虫も、土も、岩も、川も
まるで空の色をそのまま地面に落とした様に
「母さん…?父さん…?」
彼が見る先にはもう動く事はない死体
生きていた頃は彼を育て、癒し、愛してくれた父と母だった人達が、今はもう役目を終え、ただの肉塊と化している
「なんで…なんで…こんな事に…」
無表情のまま、しかし感情の高ぶりを抑え切れず頬を伝う涙
彼は泣いていた
自分しか生きている者が居ないこの場所で
数十を超えるおびただしい死の臭いが漂うこの場所で
ただ一人泣いていた
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