9017人が本棚に入れています
本棚に追加
/704ページ
俺はビルの近くにある喫茶店で待機して、アリスに持たせてある無線を通して中の様子を確認する事になった。
『あー、あー……聞こえる?』
耳に仕込んだイヤホンからアリスの声が聞こえる。
「聞こえるぞ」
周りに聞こえない様に小さな声で返事をしたけど、
『こっちも聞こえてる』
アリスにもちゃんと聞こえているみたいだった。
「感度は良好みたいだな」
『周囲の音は?』
アリスがそう言ってから少し黙り、『すいません。駅はどっちですか?』と誰かに話し掛けた。
『駅? 駅ならこの道を真っ直ぐ行って、突き当たりを右に曲がれば着けるわよ。……貴女、外人なのに日本語上手いわね』
『勉強しましたから。ありがとうございます』
そんな会話の後、アリスが歩く音と雑踏のざわめきだけが聞こえてきた。
『……どう? 相手の声も聞こえた?』
「バッチリだ。相手がおばちゃんだって分かる位クリアに聞こえた」
これで準備は整った。
「いいか、今日は様子見だ。あまり踏み込み過ぎて不信感を持たれるなよ」
会った初日に殺人を教唆するとは思えない。そんな不用心で馬鹿な奴なら、伊達さんがとっくに捕まえているだろう。
『分かってるって。スナイパーは辛抱強いものよ』
最初のコメントを投稿しよう!