7*届かないところにいた

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やっとお昼休みになって、俺は急いで携帯を手に取り食堂へ向かう。 普段食堂に来ることはないのだが、どうしても弘也が気になって仕方がなくて。 我が社の食堂は我ながら綺麗だと思う。 女性に好かれやすい清潔なガラス張りのビュッフェ形式だ。 メニューも充実していると思う。 社長である私が大勢の人でにぎわう食堂へ行くということで、豊田くんもついてきたわけで。 「社長が食堂なんて珍しいですよね?昼食とっているところ、見たこともないし」 「いや、ただの電話だけだよ。昼食は要らないかな。 豊田くんは食べてていいよ」 「電話、ですか?」 昼食を食べないと聞いて、豊田くんは不安そうにしていたけれど、普段とらないから別にお腹も空いていない。 別に心配することないよ、と笑顔で彼をなだめた。 「誰に電話なさるんですか?しかも、私用携帯ですよね、それ。相手方の会社なら電話代会社から出ますし…」 「まぁ、プライベートだからね。さすがに会社の経費で支払ってもらうほどじゃないかな」 それに、支払うほどの額でもないだろうし。 と、少し話をしてから、豊田くんに料理をとってくるように言った。 豊田くんは、なぜか電話の様子を見ていたかったようだけど、しぶしぶ料理をとりに行った。 登録してあるアドレス帳から、弘也の文字を探す。 ピッ 通話ボタンを押して、聞きなれた呼び出し音を右耳で聞く。 『はぁい、もしもし。弘也です、坂本さん?』 「あ、もしもし、弘也。ごめんね、何かやってた?」 『ううん、別に何も。どしたの?』 「いや、ただ弘也が気になって」 電話越しで、弘也のあの声がストレートに聞けないところはちょっと嫌だけど、もやもやと午前中過ごしていたから、なんだかすっきりした。 『なにぃ?オレと話したかったの?』 「…んー、まぁ、ね」 弘也のからかう言葉でさえ、俺に頑張る力をくれていた。 すると、となりに豊田くんが帰ってきた。 「…社長」
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