助走‐回想

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…………… 小さい頃、かけっこでまけたこと、なかったっけな。 ごく短い距離を、全力で疾走する。 チョークで引いた線を誰よりも早く蹂躙して、ゆっくり振り向く。 知ってるよ。みんなまだ必死に走ってる。いつだってそうだったんだ。 呼び名がかけっこから徒競走に変わっても、それは変わんなかった。 誰も踏んでない白線はいつだって俺の物だって思ってた。 思えてた。 中学になって、決められた距離を走る事の名前がかけっこでも徒競走でもなく 「ショートトラック」 なんて、わりとカッコいい名前にかわる頃、俺はわりとカッコ悪くなってた。
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