最初の騒動

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(イスパニアと戦っても勝算はあるわ。ルソンは間違いなく討てる。イスパニアはかつての蒙古のように、手広くやり過ぎた。イスパニアの周囲は敵意に満ちている。それに、どこぞに大敗して軍船を失ったとか?なれば、天竺、明からの陸路に気を配らねば。やはり、朝鮮に前線基地が要るのう)  インドから陸路を辿って朝鮮にまでスペインがやって来たら、次は日本に渡られてしまう。 「ルソンから来た新しい宗門が日本で布教することに期待してはならぬぞ。あれは、日本人の魂を奪う魂胆だからな」 (フェリペ王をデウスを戴く耶蘇諸国の宗主と見做すよう、布教と称して日本人を操作し、そちのような人間を作り上げるのが目的だろうからな)  秀吉は忠三郎の頬の辺りに視線を投げると、嘲笑った。  直後、母・大政所の危篤に接した秀吉は、長崎の教会の破壊を命じ、大坂へ帰った。  ポルトガル商人との取引にイエズス会は欠かせない。仕方なく十人の伴天連の在日は許可したが、増長されてはかなわない。名護屋に来て、高山右近との対面を許可したし、イエズス会は布教を再開するだろう。秀吉はコーボの讒言を信じた振りをし、教会破壊を命じた。
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