0の勉強

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「勉強する、とか言ってたもんな……」 コロシアムでの闘いは、自分にあった術を見つける勉強にもなる。香恋はそう言っていた。 帝斗の記憶では、嶺軍はこの術を召喚した魔具を使って防いだような気がする。龍腕はその魔具を召喚できるのだろうか、と思っていると、雷の攻撃を待つことなく龍腕は動いた。 雲との距離は刀身の長さなど比べものにならないほど開いていた。届くはずがない。届くはずがなかった。 のに。 「ふっ」 短い呼気とともに、龍腕は刀を振り上げ、振り下ろした。しばらく何も、起こらなかった。 「……あれ?」 何も、だ。香恋の術の黒雲は、何も変化を起こさなかった。雷、という形ででもだ。 次に起きた変化は、雲が真っ二つに切れることだった。 「んな……なんだそりゃ……」 「何でも斬れる、と言っただろう? 術の効果が私にまで及ぶなら、そこづたいに術全体を『斬る』という概念に従えられる」 「何でもって、むちゃくちゃだな」 「龍の牙だから、龍自体を筆頭に龍の牙の硬さすら弾く皮膚の魔獣や、龍すら噛み潰せない魔界の鉱物は例外だがな」 地面を斬ってしまい食いこんだ刀身を引き抜き、龍腕は軽く刀を振る。と、手から刀を消えた。召喚を終えたらしい。
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