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「今は刀の厚みが邪魔してこの石を真っ二つにすることはできないが」
とんとん、と刀を手の中で上下させる。石は刀の上にまたがったまま動かず、もはや刀のコブと化していた。
「そこは魔具だ。 少し意識すれば」
龍腕の顔から、今まで浮かべていた微笑が消え、代わりに真剣な表情が刀を見つめる。途端に石は刀身を下り、真っ二つに割れた――というよりも斬れた。
「斬れる」
「な……」
「こうやって、何でも斬れるのがこの刀の特徴でな。 かくいう私も、扱い慣れるまでにずいぶんこいつに斬られた。 指が落ちた時は大変だったな」
くく、と笑うが、帝斗は納得がいかずに石の断面を見た。双方、真っ平らである。合わせてみると、ぴたりとくっついて爪の先ほどの隙間もない。
薄い包丁で切って、切れたとしてもこうはならないだろうというほどの、切り口の鮮やかさだった。厚さのある刀など、入りこむはずはないのに。
「どうなって……?」
「学問の目で見ても、何も分からないぞ白矢。 どれだけ学問的に見ても理解できない仕組み――それが魔法、綴紙術であり、ひいては神の恵みだ」
微笑を取り戻し、龍腕は空いた片手に手帳を取り出した。
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