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「どうだ、綴紙術は面白いだろう」
「面白い……けどやる気は「いいから見ていろ。 やってみたくなるような、術を見せてやるから」
刀を持つ手に手帳を開いて挟み、龍腕は何かを綴る。
「どうした四季! もう終わりか?」
「……まだ負けません! 負けませんが……」
「ほら、今の内に私の体力を削っておかなければ、本気を出してしまうぞ?」
「……っ、地三!」
ドドン、と地面が揺れる。
香恋の耳にも刀の解説は届いていて、その結果の対抗策だった。地面は斬りようがない。
はずだった。
龍腕が、自分の足の間にすっと、刀で線を引いた。途端に、その線から揺れが消え、揺れない地面が広がっていく。
「なるほど、発想は良かった。 しかし、『地』系統の基礎術は単体への攻撃には向かないな。 分かってはいるのだろうが、震動で体勢を崩すことしかできない」
「……仕方ない、かな」
そうつぶやくと、香恋は手帳に目を落とした。何かを書き、そして空中を滑らせるようにして投げる。
「雷帝! 雷雲天下落走矢!」
「あれは……」
紙片は、空中を滑って上昇していった。そして、変じる。大きな黒雲に。
帝斗はこの術に見覚えがあった。コロシアムで誰かが、虎尾嶺軍という金紋の男にぶつけた術だ。
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