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――遥かに広がる太平洋。
太陽はようやくとばかりに一日のノルマの半分を埋めると、休むことなく進みだす。
視界の下半分は青。真っ青な小波立つ青だ。
そして上半分もまた青。果ての宇宙さえ見通せそうな抜けるような青。
そんな太陽と空と雲、そして海をいっぺんに眺めている少年がいた。
彼の名前は澤田明(さわだ あきら)。
スラリと伸びた体にサラサラと風に揺れる茶髪、深いブルーの瞳。
明――少年を乗せているのは、《ロウズ》の軍艦だ。
旧歴――西暦後期に現れ、世界中の国で、海で採用された頃と同じく、灰色を基調としたモノトーンの艦。
デザインも大きな変更をされることなく、ともすれば旧時代の遺物のような様相のしかねない存在だ。
しかし、これはこの艦だけが特別古い、ということではない。
二百メートル級の軍艦としては最も広く配備されている、いわば海の主力の一翼を担っているのである。
というのも、西暦も末期頃になると軍艦、どころか戦車、戦闘機にさえ原子力――つまるところ『核』を用いていた。
そして多くがその巨大なエネルギーを利用した高火力、重武装、それに伴う大型化、でありながら高速機動を実現するという、時代を一つ間違えれば単体で戦術レベルでの使用が可能となりうる兵器を、量産していたのだ。
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