全ての終わりは突然に ~The count ZERO~ 一

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「いってきまーす」 一日の全ては、その他愛もない一言から始まった。 正確に言えば、朝に目覚めた瞬間から一日が始まるが、平凡極まりない男子高校生、織田雄夜の場合は、本当の一日は家を出る時に始まるのだ。 それまでの朝御飯だとか食後の歯磨き、制服に着替える時間などは、一日の始まりの下準備でしかない。 言うなれば、プールに入る前の準備運動と同じ事。 朝の時間はそんなものでしかないと、織田雄夜は考えている。 家を出るまでの朝の時間は、一分だろうが二分だろうが、学生にとってとても貴重な時間であることは、織田雄夜も勿論知っている。 それでも織田雄夜は、学校に向かうための只の準備期間としか思っていない。 だから今日も特に何かを考える訳でもなく、ただただ最低限の行動を終えた後、玄関で革靴を履き、誰も居ない家に向かって、いってきますを言うだけだった。 誰も居ないと言っても、別に両親が離婚した訳でも、ましてや他界した訳でもない。 只単に、織田雄夜の両親が、彼よりも早くに仕事に出掛けただけの事。 織田雄夜には歳が一つ下の妹もいるが、妹は兄よりもしっかりしていて、兄よりも少し早い時間に家を出ている。 織田雄夜は高校一年生で、その妹は中学三年生である。 当然ながら、バリバリの受験生でもある。 織田雄夜と妹が通っている学校は、お互い中高一貫という訳でもないので、当然通っている学校は違う。 去年までは彼と妹は同じ中学に通っていたが、織田雄夜が中学校を卒業した事で、今は違う学校に通っている。 とは言っても、通学路は途中までは同じで、家からの距離もそう違う訳でもない。 学校指定の登校時間も殆んど同じである。 だから妹の方が兄よりも早い時間に家を出るのは、妹の方が兄よりも時間に余裕を持っている。 つまりは、妹は兄よりもしっかりしている、という証明にもなる訳だ。 ちなみに、妹の第一志望の高校は、兄が今通っている高校とは違うらしい。 妹の方が学業成績は良いので、兄よりはワンランク上の高校を受験するのだろう。
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