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軽く済ませたいと思って冷蔵庫を開けた時、音楽番組の司会者が“オカノアキヒト”の名を言った。
最初に歌うのだと知ってリビングへ戻り、眼鏡を掛けてスタンバイする。と同時に、ドアベルが鳴った。
急な来客に苛立ちを感じながらも無視する事は出来ず、渋々玄関へ向かう。
ドアの向こうに居たのは、笑顔の綾子だった。
「どうしたの?」と聞きながら、TVの音を気にする。
ボリュームが小さすぎて、ハッキリと聞き取れない。
イライラする。
「手伝いに来たわよ」
笑顔でそう言う綾子の手に、缶ビールが入った袋を見付けた。
一緒に飲む為の口実だわ―と思ったが、正直、手伝いが欲しいと思っていたところだった。
「入って」と瑠璃が言う前に綾子は靴を脱ぎ、リビングへ向かっていた。
綾子を追う形でリビングへ行くと、TVでは、まだ“オカノアキヒト”が司会者とトークをしていた。
今度はハッキリとその声が聞こえ、聞いた事のある声だと思った。
TV越しに聞いた声ではない。
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