キャンパス

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ただの一枚の真っ白なキャンパスには、何も描かれていなかったはず。 いつからだろう…こんなに色が重なり合って、不協和音を奏で出したのは。 いつからだろう…こんなに形がありすぎて、構想も何もなくなったのは。 ただただ、描きなぐり続けて、目の前の一つの形を一生懸命描き続けた。 それを一枚のキャンパスの端と端、真ん中、斜め上…至る所、所狭しと描き続けた。 自分の好きな色達だから、好きな色を沢山使いたかったから、思うがままにキャンパスに拡げていった。 綺麗な線や、歪んだ線。大きな丸や小さな丸。言葉に出来ないいびつな形。 好きなものばかり描いてきたのに…好きなものばかり集めたのに…ひとつひとつは美しいのに、こんなに収拾つかない、あまりに醜いキャンパスになってしまった。 僕はキャンパスを何枚も持っておくべきだった。 そうすれば、一枚のキャンパスにたった一つ、大好きな形を大好きな色で、ひとつひとつそれだけを見て、丁寧に、描けたのに。 一つの作品として、昇華することができたのに。 でも、持てなかったんだ。 一枚のキャンパスしか。 持てなかったんだ。 一つの心しか。
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