ハロウィンの奇跡

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夜の病院なのに、騒がしかった。 こっそり裏口から侵入した僕らは、その騒がしさの理由を知ってる。 ナミと頷きあって、走った。 「あ! ちょっと!!」 看護士さんが気付いて叫んだが、関係ない。 走る。 あの子の元へ。 「馬鹿野郎っ!!」 そう叫んで病室に入った。 家族の人達が振り返る。 男の子は力無く眠っていた。 酸素ボンベが、ない。 「うそっ……」 ナミが震えているのが、分かった。 死ぬな 死ぬなよ。 「馬鹿、死ぬな。死ぬな死ぬな死ぬな! まだやりたいことがあるんだろ!? 勇気出すんだろ!? 僕に、ナミに勇気出せって、言っただろ!?」 力の限り叫んだ。 それでも、起きない。 涙が頬を伝う。 「分かったよ……見てろよ」 涙を拭って、言った。 こんなことしたって、男の子はもう。 でも、男の子の願いだ。 僕の、願いだ。 勇気、見せてやるから。 「ナミが好きだ!」 ナミが驚いて僕を見た。 僕は続ける。 「ずっとずっと好きだ! 好きだった! 例え!」 「シン……」 「彼氏がいても、好きだよ……」 勇気、出した。 出せた。 こんなにも、簡単に。 パチパチパチ。 拍手? 振り向いた先。 嘘だろ!? 「おめでとう、シン」 男の子が、起き上がって拍手してる。 家族の人達も驚いていた。 「ふふ、病院の院長さんにお願いしてさ、一芝居打ってもらったの。シンのために」 何だって? でも、男の子は確かに……。 魔法のようなものを使っていた。 生身じゃ無理だ。 そうすると、男の子は内緒だよ、と言うように指を口元にあて笑った。 「なんてったって、ハロウィンだから」
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