ハロウィンの涙

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お母さんやお父さんにしこたま怒られたぼく。 シンとナミにも怒られた。 そのあと、告白のことを聞くと、 シンとナミは照れ臭そうに笑っていた。 よし、きっとうまくいく。 ナミは知ってるから。 浮気されていること、知っているから。 シンのちょっとの勇気で変わるんだ。 ぼくはずっとシンを、ナミを見ていたからね。 シン。 ナミはね、先輩のことが好きだったけど、裏切られて気付いてた。 だから、あと一歩だと思った。 天使様に ハロウィンの日に、人間界に戻れって言われたんだよ。 お前のために泣いてくれる人間がいるからって。 だから。 『力を、下さい。今夜だけ』 君の、シンのために。 ぼくが生きられるのは、君のおかげだから。 だから。 「何泣いてるんだ?」 シンが尋ねてくる。 ぼくは、笑った。 「死ななくて、よかった。死にたく、なかったから。シン、ありがとう」 「……僕こそ。ありがとう」 ぼくの涙の意味を、シンは知らない。 たくさんの感謝と、たくさんの嬉しさ。 それでいい。 この気持ちはぼくのもの。 「そういえば、名前。その……。また、会いたい」 苗字しか知らないんだな、シンは。 ぼくは答えた。 ハロウィンの夜。 小さな奇跡がふたつ。
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