運命的な出会い

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 壇上に立った男は生徒会長として挨拶の言葉を読み上げる。 彼、篠塚秤(しのづか はかり)は品行方正、文武両道。しかも顔も稀すぎるくらいに美形で、家柄もすこぶる良いと言う、正に絵に書いたような完璧少年だ。学園内で数々の業績を残す彼は、その理由から今年見事と言うか順当にというべきか、生徒会長に当選したのだった。 何故かどことなく気だるげな彼の声が、新入生を迎え入れるため、華やかに飾り付けられた体育館内に響く。 その彼をじっと見つめている少女がいる。 彼の目の前に立つその少女の名は先鐘三百合(さきがね みゆり)。 入学試験の全科目を驚愕の全て満点という嘘のような頭の良さと、男だろうが女だろうが道を歩いていたら思わず振り返ってしまうような美貌だが、少しつり気味の目元と余り表情を変えないため初対面の人からは怖いなどと言われてしまう風貌の少女は、この学園に入学し、新入生の挨拶をするために壇上に立っている。 周りの新入生たちは、篠塚のやけに長ったらしい挨拶を、女子は彼の容姿とこれからの学園生活に心をときめかせ、男子は壇上に上がるときにちらりと見えた彼女の顔に心を射抜かれ、彼女のスカートの裾に意識を集中させながら、延々と聞いている。 この後何が起こるかも知らずに。
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