変化は突然に

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「だからさぁ…犬耳娘と猫耳娘が比較されるなら、絶対に犬耳娘に軍配が上がるわけ!犬耳には視覚的な可愛さだけで無く、犬が持つ主人への従順さを連想させる安心感を与える。つまりは一粒で二度美味しいアイテムなのだよ!!」 「お前の言いたい事は解る…だが元来女性とは気まぐれで男性には永遠に理解し難いモンだ。つまりはそんな女性の本質を忠実に再現した猫耳こそが、女の子にジャストフィットする萌えアイテムだと僕は主張する!!」 もし関係の無い赤の他人にまじまじと聞かれれば大変恥ずかしい―或はキモい―会話を繰り広げる二人を含め、合計六人のポピュラーな学ラン姿の少年達が歩いていた。 このまま真っすぐ向かえば彼らの通う学校からの最寄り駅が有り、電車通学の生徒はそのまま自宅に帰宅するという流れが成り立つ。 しかし彼らの内何人かは、自転車を身体の脇で共に並走させている者も居る。 それは彼らが本来の帰り道から外れ、わざわざ電車通学組と並走する事を選んでいる証であった。 そうまでしても六人一緒に歩いている理由は、ただ単純に彼らの『仲が良い』に他なら無かった。 「んじゃ我らの犬代表に意見を聞こう。…でどう?」 「知らない。ていうか犬扱い止めろって言ってるだろ」 「ん~俺はやっぱり…」 「オメェには聞いて無い!では彼女持ちの意見は?」 「う~ん…好きな相手ならなんでもOKだなぁ」 「うわ!テンプレート通りの甘々ノロケご馳走さま。結局マトモな意見が得られず、事態は迷宮入りだよ!」 彼らにとって、退屈な授業の合間の休憩や帰宅途中のささやかな自由時間には、この様に集まってくだらない談話をその都度行うのが『いつも通り』なのだった。 何の代わり映えの無い日々の繰り返しだが、彼らは間違い無くその一日一日を楽しみ…それがあと一年近くは普通に続くと思っていた。 そう確かに― ―そう思っていたのだ。
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