3/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
霧は濃さを増す。 彼は動かない。 しだいに服は湿り始め、重さを増していく。 不安が彼を震わせる。 恐怖が彼を竦ませる。 勇気はそれらに押し負け、彼は枯れ木にもたれかかる。 その枯れ木も、いつまであるのかわからないのに。 その枯れ木の後ろには、彼が想像する様な奈落が口を開けているのに。 一歩踏み出せば、足元が見えるのに。 さらに歩けば、道が街まで続いていて、もう霧は晴れかけているのに。 一歩踏み出せず、彼は立ちすくむ。 一歩の勇気が、彼のこの後を左右している。 枯れ木は、いつか朽ち果てるだろう。 それまでに、彼はそこから離れられるのか、 否か、 それは彼の意志。 もう逃げる場所は無い。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!