二章

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まるで金縛りにあったように動けないオレを見ながら、隼人は頬に置いていた手を徐々に下へと移していく。 首筋、そしてそのまま肩口に手を差し込むと、襟を掴んで横へと強く引いた。 上まで留めていたボタンが、ブチッと鈍い音をたてながらいくつか弾け飛ぶ。 「――っ」 動けないオレは、目さえ逸らせなかった。 隼人の咥えている煙草が視界にチラつく。それが動けない一つの原因でもあった。 最早その匂いだけで吐きそうだ。 「ふーん…残ってんだ、コレ」 そうして露わになった右側の鎖骨…そこに残る痕を見るなり、隼人は満足そうに目だけで笑った。 「薄くはなっても消えねぇんだな。…なぁ、まだ痛ぇ?」 「…っ」 そこを指でなぞられ、感触にビクリと肩が揺れた。 そんなオレの反応に隼人はまたしても満足そうに笑う。 「そんなエロい顔すんなって。ココ、感じんの?」 「っやめろ…」 隼人の指と視線から逃げるように、オレは堅く目を瞑った。 だが下へ俯こうとするオレに対し、隼人はあろうことか吸っていたタバコの煙を顔へ向けて思い切り吹きかけてきやがった。 いきなりの大量の煙にオレは激しく咽る。 「う…ゲホ!っゲホ、なにすん…ッ」 「勝手に下向いてんじゃねぇよテメェ。こっち向け」 顎をとられ、無理やり目線を合わせられる。 隼人の切れ長の目に自分が映るほど至近距離で顔を合わせられ、オレは震える奥歯を噛んだ。 煙のせいか恐怖のせいか、じわりと目に涙が浮かんでくる。 もはや神経を疑うような隼人の行動を咎めることさえオレには出来なかった。 ただ、ここから逃げたい。 だが…そんなことは不可能に近いと、オレは分かってしまっていた。 「う…」 絶望的な感情をコントロールできなくなって、勝手に涙が出てくるのを抑えることが出来ない。 隼人がそんな泣くオレの頬を、下から掬うように舐め上げた。 「泣くなよ…ヤりたくなんだろ?」 「な…」 耳を疑う言葉に、オレは目を見開く。 隼人はキレイに、そして妖しく笑いながら続けた。 「今度は優しくしてやろうか?お前が可愛く泣くとこ見てぇし」 「な…に言っ…──ッ!」 オレがその言葉を呑み込む前に視界が反転する。 肩を押さえられて、横へと倒された。体重を掛けて隼人が上にのしかかってくる。
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