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「お父さん、何してるの?」
龍一は、机に向かう父に問う。
遊んで欲しいのだ。
めったに家にいない父に。
だが真剣な父の表情を見てそうは言い出せず、仕事をしているのだと知りながらこんな問いをかける。
「龍一か。これはね、将来の地球を救うかもしれない大事な仕事なんだ。遊びたいかもしれないけど、また今度ね」
地球の将来を救う。
言葉の響きが龍一の心をときめかせる。
「あなた、龍くんに何言ってるの」
後ろからの声に振り返ると、ドアのところに母が立っていた。
食事の準備中なのか、手にはジャガイモが数個握られていた。
「何って、嘘はついてないよ?」
「そーゆー意味じゃなくて……まだ早いでしょ?」
「虹炎術に才能があるなら、知ることに早いことはないさ。なんてったって僕らの子供だぜ?」
「こーえん?」
龍一は父の顔を見上げて。
「虹炎術。こうして、」
父の手から黒い炎があがり、わっ、と龍一が驚く。
「人は炎を灯すことができるんだ。やり方はこの本に書いてあるけど」
厚い本を取り上げる父。
人は炎を……僕の手からも炎がでるの?
龍一はぎゅっと自分の手を握りしめる。
「龍くんにはまだ難しいでしょ?」
「ははっ、そうだね、じゃあもっと大きくなってから……教えてあげようね」
「うん!」
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