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「『滝火』(たきび)」
一年生の頭上から滝の如く火が降り注ぐ。
迫り来る熱量に頭上を見、驚愕して体の動きが止まる。
ハッ、と冷静になったかと思うと、何故か眼鏡を外す。やや乱暴な手つきでポケットに仕舞うと、次の瞬間には走り出す。滝火から逃れられるとは思わないが……。
しかし予想は外れ、先のような魔法とは打って変わって、高レベルの身体強化を施しつつ走る。それと同時に風を自身に纏い、更にその速力を増す。
見事、ギリギリながら滝火の効果範囲から逃れ、背後の溶岩と化した石畳を見やる一年生。
その瞳は細められ、何処か楽しそうにも見える。
「苦手とか言っときながら、中々どうしてやってくれるじゃねェか」
「……口調が変わったな。それに魔法の使い方も大きく変わった。……別人格、ってところか?」
「……ほォ?」
感心するように息を吐き、口元を歪ませる。シンスの予想が正しいと認めたような反応。
「いいねェ。いいよ、お前。戦闘しか能がない馬鹿かと思いきや、本当に中々どうして。キレるヤロウじゃねェか」
「……二重人格か。それならそんなに訓練する時間もなさそうなものだが?」
「あるよ。たっぷりある」
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