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「ねぇ、竜……もしかして最初からこうなるって分かってた?」
「は?」
「やけに竜に都合よく物事が進んでいる気がするから……」
「あーーーあぁ、かもな」
「…………」
あっさり認めちゃったよ、この人。
私は怒りの眼差しを竜へと向ける。
「あ、でも少し釈明もさせてくれ」
竜は適当な路肩に車を停車させると、真っ直ぐに私を見つめてきた。
私も思わず息を飲む。
「確かに、俺とお前の結婚は最初から決まっていた。
恐らく、イマーヌが二階堂グループから独立した時には……既に交わされていたものだろう」
「そんなに前から?」
遥か彼方のこと過ぎて、意識が遠退いてしまう。
「俺の親父は……俺がその頃から杏を好きだって気持ちは知っていたし、それは多分お前の両親にも伝わっていたんだと思う」
「…………」
私のこと………そんな前から。
改めて言われると、照れてしまう。
「親父達もきっと陰で楽しんでたんだろうな。
それこそ俺がお前と結婚出来るかどうか、ありゃ互いに賭けてたに違いねぇ」
「………はぁ」
ウチの親に限って………やりかねん。
そう断言出来てしまうのも悲しい。
「でも、どちらかの会社がピンチの時は必ず協力する。それも独立時に交わされた約束らしい。
それが今回果たされたというワケだ」
「………そうだったんだ」
「だから別に俺1人の一存ってことでもねぇが……まぁ、俺のお前への想いを叶えてもらったってことにはなるのか」
照れくさそうに笑う竜。
「そのくせ今回は霧島のこともあったし、いろいろ厄介でな。ホント苦労したぜ」
困ったように笑う竜の指先が、そっと私の頬を撫でた。
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