1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「なに、なにっ!?何してるの~!?」
甲高い声を、もう1オクターブ跳ね上げて、彼女は、俺の手元から小さな紙を取りあげた。
「ああっ!こら返せよ。」
「あ~ん。
なにそれ?折り紙?
何折ってるの???」
俺は取り返したそれを、人差し指と中指の間に挟み、彼女の鼻先で振って見せた。
「きょ・う・りゅ・う。」
夏の太陽が、容赦ない陽射しを投げつけている日曜の夕方。
今時エアコンも付けていないエコロジー重視(負け惜しみ)の俺の部屋で、彼女は汗ばんだ胸元に長い髪をまとわりつかせた、かなり目のやり場に困る姿を隠そうともせず、小雀みたいなキョトン顔で俺を見ている。
「きょうりゅう?」
「そう。」
俺は折り紙を完成させようと、再び指先を動かし始めた。
俺の名前は、木下 諒太郎(きのした りょうたろう)。
3流大学法学部の3回生。
運が良ければあと1~2年で卒業することだろう。
自分で言うのも気が引けるが、世界広しといえども、木下 諒太郎と言えばこの町に俺一人だ~っ!
ちなみに彼女は水上 香素美(みずかみ かずみ)。
同じ大学の1回生で、2つ年下の俺の可愛い恋人。
外国語学部のアイドルと言われるくらいの外見に反して、性格は少々痛い・・・。
友人曰く、似た者カップルだそうだけどι
「おお~。諒ちゃんって器用よね~。
その指技が、エッチの時にも役立つんだね。」
完成した折り紙を見て言った彼女の言葉に、危うく恐竜の首を引きちぎりそうになった。
「若い娘が、そゆこと言わない!!」
「あはははは。
ね、ね。これ何て恐竜なの?
ティラノサウルス?」
「似ても似つかねーじゃん。
おまえティラノの形知らないだろ。」
「うん。知らな~い。」
香素美は胸を張って答えた。
乳を隠せ!乳を!
自慢する程の大きさじゃねーだろうに。
最初のコメントを投稿しよう!