《折り紙》

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「なに、なにっ!?何してるの~!?」 甲高い声を、もう1オクターブ跳ね上げて、彼女は、俺の手元から小さな紙を取りあげた。 「ああっ!こら返せよ。」 「あ~ん。 なにそれ?折り紙? 何折ってるの???」 俺は取り返したそれを、人差し指と中指の間に挟み、彼女の鼻先で振って見せた。 「きょ・う・りゅ・う。」 夏の太陽が、容赦ない陽射しを投げつけている日曜の夕方。 今時エアコンも付けていないエコロジー重視(負け惜しみ)の俺の部屋で、彼女は汗ばんだ胸元に長い髪をまとわりつかせた、かなり目のやり場に困る姿を隠そうともせず、小雀みたいなキョトン顔で俺を見ている。 「きょうりゅう?」 「そう。」 俺は折り紙を完成させようと、再び指先を動かし始めた。 俺の名前は、木下 諒太郎(きのした りょうたろう)。 3流大学法学部の3回生。 運が良ければあと1~2年で卒業することだろう。 自分で言うのも気が引けるが、世界広しといえども、木下 諒太郎と言えばこの町に俺一人だ~っ! ちなみに彼女は水上 香素美(みずかみ かずみ)。 同じ大学の1回生で、2つ年下の俺の可愛い恋人。 外国語学部のアイドルと言われるくらいの外見に反して、性格は少々痛い・・・。 友人曰く、似た者カップルだそうだけどι 「おお~。諒ちゃんって器用よね~。 その指技が、エッチの時にも役立つんだね。」 完成した折り紙を見て言った彼女の言葉に、危うく恐竜の首を引きちぎりそうになった。 「若い娘が、そゆこと言わない!!」 「あはははは。 ね、ね。これ何て恐竜なの? ティラノサウルス?」 「似ても似つかねーじゃん。 おまえティラノの形知らないだろ。」 「うん。知らな~い。」 香素美は胸を張って答えた。 乳を隠せ!乳を! 自慢する程の大きさじゃねーだろうに。
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