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案の定カツオの失職騒ぎはワカメの口から必然的に磯野家家族全員の耳に入る事となってしまった。
《解ってるわよねカツオッ、今日これから実家に来なさい!今すぐによッ!》
「はいはい行きますよッ、行きゃいいんでしょ行きゃ。」
姉サザエの声は明らかに怒りに満ち溢れたものだった。
夕方職安の帰りにカツオが実家の戸を開くと玄関口で腕組みをして仁王立ちの姉サザエが鬼のような形相でじっと待ち控えていた。
「あ、アチャ…ハハハ…」
「さぁ聞かせて貰えます磯野カツオ君ッ?どうして会社を辞めたのかッ、辞ッめッたッのッかッッ!?」
姉の背後にメラメラ燃える炎が見える…カツオは肩を竦めただその威圧感に圧倒されていた。
「はい…そ、そ、それは…」
「不景気が続くこのご時世にポォ~ンと仕事をやめれるくらいなんだからよっぽどいい再就職先が見つかったんでしょうね~!」
サザエはカツオを睨み付け思い切り皮肉った。
「玄関で話しないで中に入ったらどうだい?」
奥から母フネが顔を覗かせた。一見穏やかな口調ではあったが内心穏やかであるはずがない、カツオはフネの助け舟にすがるように仁王立ちの姉の身体を擦り抜けて居間に向かった。
「きちんと納得の出来る理由があんでしょうね!無いとは言わせないからね!」
サザエも後を追うように居間に進んだ。
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