【 ― 坪倉 ― 】

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「お待たせしました」 待ち合わせはいつも同じバー。 そこは俺らがまだ全然売れてない頃から愛用している小汚い店。 若林が出ていていたショーパブと 俺が働いていたホストクラブのほぼ真ん中。街の雑踏から逃げ出した場所にそれはあった。 「なんだ、早かったな」 カウンターから振り返えると、コートを片手にスーツ姿の若林が立っていた。 濃いグレーのネクタイに雫型のラメが入ってる。 「へえ、やっぱり売れっ子になるとセンスも良くなるんだな」 「覚えてないんですか? 貴方がくれたんですよ」 「ん~…」 思い出そうとしたが、 全く見覚えが無い。 「僕があまりにもみすぼらしいのをしてたから… …あぁ、もう、いいです。 忘れてください」 若林はため息をつき、 隣の席に着席する。 「俺のプレゼントしてくるなんて、可愛いところあるじゃん」 女がとろける笑顔で微笑むが、 「別に。 選ぶときにたまたま思い出したからです」 と冷たいお答え。 -
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