日常3 《ヤンキーと少女とお弁当》

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ーーー・・・。 期待。 それは、とうに忘れてしまった【モノ】だった。何を期待したとしても、いつも自分の手から・・・こぼれ落ちてしまう。 その度に泣き、叫び、痛むのは辛かった。 だからこそ優は期待をしないように・・・忘れるようにしていた。 しかし、頭では理解していても心は何処か期待していたのだろう。 最後に春人に会って、早2日。 春人は公園に現れなくなった。 ・・・また・・・捨てられちゃった。 優は返すはずだった武骨なお弁当箱を握りしめながら、今日も夜の公園で1人ベンチに座る。 もう春人はここには来ない。 そもそも、自分にかまうメリットが彼には無いのだ。 そう理解していても・・・優の足は自然と公園のベンチに向かってしまう。 もしかしたら今日は来るかも知れない。 そんな淡い期待を心の何処かで感じながら・・・。 「君?何をしているんだい?」 ・・・突如、声を掛けられ顔を上げる。そこには、綺麗な顔立ちの青年が笑っていた。 「こんな夜中に・・・行く場所がないの?」 「・・・うん。」 青年はとても優しく微笑んでいた。 優しい声、優しい態度・・・しかし、優にはこの青年が恐ろしくて仕方がなかった。 何かをされた訳ではないのに・・・自然と身体が震えた。 そして青年の瞳に見つめられると、芯まで冷えきってしまうような・・・死を受け入れてしまいそうな・・・。 優は直感する。 ああ・・・私は死んじゃうんだな。 ・・・と。 青年は優の手を優しく掴むと「じゃあ、僕が幸せな場所に連れていってあげる。」と微笑んだ。 「・・・。」 ・・・お弁当箱・・・返したかったな。 優は小さく頷くと、ゆっくり立ち上がろうとした。 まさにその時である。 「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛!!」 けたたましい叫び声と共に春人が、その青年に向かって拳を振り下ろした。 青年は「あ?」と小さく声を上げると、春人の拳をギリギリで避ける。 「・・・何?君。」 「あ?てめぇが何だ?こら?」 「いや、いや、あはは。え?お兄さん?僕は何もしてないよ?ただ、その子に・・・。」 「うるせぇ。てめぇ・・・何かムカつくな・・・ぶっ殺す。」
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