21/34
19001人が本棚に入れています
本棚に追加
/890ページ
「それで今あの二人はどちらに? まだ祇園ですか?」 口許を引き締め、虹が永倉に尋ねる。 「いや、前川邸に戻っている筈だ。 だが、あの口ぶりでは、すぐにまた何処かへ出掛けるみたいだったな。 床屋を呼ぶとか言っていたぞ」 「そう、ですか」 不敵に口角を吊り上げる虹に永倉と原田は苦笑いする。 「まあ、新ぱっつぁんは巡察だから協力できねえが、俺は暇だから力になるぜ? なんかねえか?」 原田が虹を気遣い尋ねる。 そんな申し出に虹は嬉しくなり、爽やかに笑って礼を言った。 「では前川邸の門前に待機してもらえませんか? もしかしたら逃げてくる輩が居るかもしれませんので」 「任せておけ」 「秋月、お前は病み上がりなんだからくれぐれも無理はするなよ?」 胸を張る原田に苦笑している虹に永倉が釘を刺す。 そんな永倉に虹は困ったように眉を下げ、「分かっています」と言った。 「それにしてもあの四人が長州の間者だったとはな……。 あいつら七月に入隊したばっかじゃなかったか?」 原田がしみじみと呟く。 「まあそれだけ我等も有名になったということでしょう。 間者が送り込まれるということは、それなりに警戒されているということですから」 山南は優しい顔をしながら言う。 「という事は……。 もしかしたら芹沢さん殺しは奴らの仕業なのかもしれないな……。 長州の人間なら筆頭局長であった芹沢さんに恨みもあるだろう」 永倉の何気ない一言が辺りを静寂に包むこととなった。 「……そういえばあの日、あの四人は途中で居なくなったんですよね。 次の店を手配するため人数を数えようした時、姿が見えなくて」 藤堂が思い出したように呟いた。 「土方さん達と合流した訳ではないんだよな?」 「ああ」 永倉が土方を見ると、土方は何も知らないように頷く。 すると永倉は納得したのか土方から視線を藤堂へと戻した。
/890ページ

最初のコメントを投稿しよう!